RADWIMPS『PAPARAZZI（パパラッチ）』

RADWIMPSの新しいアルバムに収録される『PAPARAZZI～＊この物語はフィクションです～』のMV。

RADWIMPS『PAPARAZZI＊この物語はフィクションです～』

PAPARAZZIのタイトルの読み方は、「パパラッチ」。

パパラッチは、「有名人のゴシップネタを追いかけるカメラマンの俗称」を意味します。

これは結構今まで以上に物議を醸すか、ファンの一部はほんの少し離れていってしまう曲になるかもしれません。

RADWIMPSには、デビュー当初からこういう攻撃的でブラックな曲自体はあったものの、これまでのブラックな曲は、もう少しフィクションで包んだり、もっと根底にある人間の愚かさをえぐる歌詞でした。

RADWIMPS『おしゃかしゃま』

しかし、この『PAPARAZZI＊この物語はフィクションです～』は、作詞作曲を担当している野田洋次郎さんの怒りが生々しく現れています（だからわざわざ「フィクション」と注釈がつけられているのでしょう）。

どの面下げてんなことしてんだ
倫理に反したあんたらが
なに不倫だ不純だいってんだ

国家権力にはへこへこします
弱い者虐めが板に付きます
あんたの子供の頃の夢は
まさかそれじゃなかったよな？

出典 :『PAPARAZZI＊この物語はフィクションです～』

俺のとこなら百歩譲ったとしても
実家の親の家にへばりついて
堂々直撃してきたな？
息子さん苦節10年成功して良かったですね
親御さんとしてどうですか？
あんたの親にも聞いたろか

出典 :『PAPARAZZI＊この物語はフィクションです～』

MVでも過激な表現があり、カメラを構えるパパラッチの男性の後頭部が撃ち抜かれるシーンや、週刊誌によって追い詰められた誰か（野田洋次郎さん）が首を吊るシーンもあります。

この首吊りシーンに、実際にその光景を見た人がいてトラウマの過去に引き戻される、という批判もありました。

ただ、その批判を受け入れてしまったら、今後交通事故のドラマも、戦争映画も、この世界の誰かのトラウマを刺激するあらゆる映像が全て放送、描写できなくなるでしょう。

だから、首吊りの映像や、後頭部から撃ち抜かれるMVの演出は、曲調や歌詞の雰囲気とも合っていて全体としては完成度の高い作品だと思います。

一方で、個人的に残念だったのは、この時代に、野田洋次郎さんともあろう才能が、敵として撃ち抜くのが「パパラッチ」か、ということでした。

パパラッチに象徴される「人間」の愚かさを抽象度を高めて歌にするのではなく、これは、割とそのまま「パパラッチ」をターゲットに攻撃（反撃）した歌です。

生のキーワード（「君の名は。」や「実家の親」）からも、そういう印象を抱かせます。

もちろん、週刊誌の下衆な連中から受けた「嫌がらせ」は想像を絶するものだったのでしょう。

ただ、これはあくまでイメージですが、「パパラッチ」は、まさにこの歌でパパラッチを批判するために使われる「弱い者」という言葉が当てはまる存在のような気もします。

歌詞には他に、「国家権力」や「テレビ」、「世間」という言葉も登場しますが、どちらかというと厄介なのはこちらのほうで、「パパラッチ」じゃないのではないか、と。

現に、MVに登場する「パパラッチ」の男性は、うつろな目で「弱い者」の雰囲気に満ちています（存在感のある俳優さんでした）。

かつて『おしゃかしゃま』では「神」と向き合って思想性に溢れていたRADWIMPSが、今向き合うのが（もちろん多義的なニュアンスも込められてはいるのでしょうが）「パパラッチ」か、という残念さはありました。

「PAPARAZZI」の画像の向きを反対にしたのがインスタに上がってたけど、「PAPARAZZI」を区切って向きを反対にしたら「I RAZZ PAPA」になるってすごいよな

私はパパをからかうって意味やねんて pic.twitter.com/h3jDncJpyd

— ジェニファー野澤くん (@nozawawoman) 2018年12月6日