RADWIMPSと「解散危機」
RADWIMPSのインタビューが掲載された、雑誌『RollingStone（ローリングストーン） vol.５』では、過去にあったRADWIMPSの「解散危機」を匂わせるようなエピソードが語られています。
野田洋次郎さんは、当初、RADWIMPSというバンドを「最強のバンド」にしたかったそうです。
憧れたレッド・ホット・チリ・ペッパーズのように、メンバー全員が超人のようなバンドにしたい、というのが洋次郎さんの理想のバンド像でした。
以前のインタビューでも、かつてはクラシックの歴史的な音楽家のような、歴史に残る音楽を本気で目指していた、といったようなことも語っていましたし、アルバムを一本完成させるごとに力尽きて入院していた、という話もしています。
繊細にストイックに「完全」を目指し、そして、そのレベルをRADWIMPSの他のメンバーにも求めていたのでしょう。
しかし、その結果、メンバーへのプレッシャーも高まり、メンバーが一度は「ごめん、RADWIMPSの足を引っ張ってるから辞める」と申し出るほどになったそうです。
俺はずっと、ちょっと違うバンド像を目指していたんです。「全員が無敵」みたいな。最強の布陣で最強のバンドを目指していたけど、それを目指していたら精神的に破綻して。みんなが、それぞれ1回ずつぐらい、「洋次郎、本当にごめん。もう俺、このバンドの足を引っ張るから辞めるね」ってなって、それで考え方を変えたんです。
出典 :『RollingStone vol.５』
こうしたことをきっかけに、野田洋次郎さんは、それまで自分の目指していたバンド像を見直すことになります。
もともとは、曲作りの段階から互いに擦り合わせていって高次元の楽曲を制作していく、という理想があったものの、「圧倒的に自分が責任を持って作る（野田）」という形に切り替えていきます。
メンバーのできていない部分を指摘し、理想を目指すのではなく、よい部分を見て、できることのなかで最大を目指すという「RADWIMPS」の形に変わっていきました。
それはちょうど、アルバム『絶体絶命（２０１１年）』の辺りからだったそうです。
まさにRADWIMPSの「解散危機」という事態でもあったその頃、野田洋次郎さんは、自分の理想像ではなく、RADWIMPSでバンドを続けることを選択します。
野田 : だから６、７年前に、バンドを続けることを選んだんです。
インタビュアー : それは逆に言うと、RADWIMPSを終了させるという選択肢が、なきにしもあらずだったということですよね？
野田 : そうそう。もともとのバンド像を追いかけ続けていれば、違うバンドをやっていたのか、終わっていたんだろうなって思いますよ。
出典 :『RollingStone vol.５』
RADWIMPSを続ける道を理由について、冗談めかして、「みんな結婚してたから」と言ったあと、洋次郎さんは、「一緒にやり続けたいなって、単純に思ったんだと思いますね。一緒にいることを第一に選んだのだと思う」と言いました。
こうした「解散危機」を経て、今のRADWIMPSの姿があったのです。
そして、このことと呼応するように、RADWIMPS以外の表現手段も模索し、野田洋次郎さん自身「開く」ようになります。
それが、illionや俳優の世界、『君の名は。』でした。
野田洋次郎さんの理想とするRADWIMPSを目指すことで、RADWIMPSが壊れることになる。その矛盾のなかで、洋次郎さんは、RADWIMPSであることを選択する。
洋次郎さんの目指す「最強のバンド」で歌われる歌も聴いてみたかったというファンもいるでしょうし、RADWIMPSが残っていてよかったと安堵するファンも多いのではないでしょうか。
RADWIMPSは、確かに「変わった」のですし、また何も「変わっていない」とも言えるのかもしれません。
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